FUJISATO LIVING COLUMN

  • 暮らしのツボ
  • 2019/02/25

『最もチケットのとれない講談師』『100年に一度の講談師』と言われる神田松之丞さん。そんな松之丞さんの独演会が昨年に引き続き、平成30年11月6日に藤里町で開催されました。無謀にもインタビューを申し込んだところ、快く了承していただきました。本記事は松之丞さんの公演当日の様子と貴重なインタビュー内容について、前後半2本立でお届けいたします。

松之丞さん独演会のポスター

松之丞さん到着

 飛行機の遅延により、予定より到着の遅れた松之丞さん。開場1時間前に、大きなトランクを自ら運びながら、ロビーで出迎えた一人一人に挨拶していただきました。
 時間が無いため、さっそく会場の確認を行うことに。松之丞さんがまず行ったのは物販の準備。大きなトランクを広げると、その中には、大量の物販グッズが。小銭の入ったミニ金庫まで用意されています。自らグッズを机に並べ、担当者にグッズの価格や金庫の使い方まで丁寧に説明していました。本公演の二日前、11月4日によみうりホールでキャパ1100席の『まっちゃん祭り』を成功させたご本人が物販の準備をしている姿は、なんとも不思議な感じがします。

開演10分前、100人以上の長い行列ができた

 物販準備が完了した後は高座(寄席の舞台)にあがり、マイクの音量は後ろの席まで届いているか、高座と客席の照明に問題は無いか、細かく指示を出していきます。また、高座の側面に貼っていたマイクコードを押さえるためのバリ(粘着テープ)を剥がすように指示。バリが逆に目立ってしまうのだそうです。その指示は淡々と、細かい部分まで行き届いていました。
 最後に、全体の流れを説明しながら出囃子を流すタイミングを決めて準備完了。着替えるために控室へ。この時点で、開場まで30分を切っていたのですが、焦る様子のない松之丞さんはとても格好よかったです。

 

満席になった客席

開場30分前

 その後、客入りが気になったので1階に下りると、なんと100人以上のお客さんが並んでいます。他町からもたくさん訪れていただいているようで、松之丞さんの知名度はさすがです。
 いよいよ開場となり、どんどん席が埋まっていきます。みなさん心優しく、譲り合いの精神に満ちているのでしょう。後ろの席から埋まるのが藤里町。みなさん心優しく、譲り合いの精神に満ちています。あまりに後ろから埋まるので、事務局の人が前から座るようにアナウンスをしていました。あっという間に、満席になったため、急遽席を足すことに。こういったおおらかな対応も、藤里町の温かさだと思いました。

開演前の緊張感

 開演時間となり、出囃子「猩々(しょうじょう)くずし」がかかります。しばらくして、ついに松之丞さんが登場。その姿は、先ほどとは違い、私が知っている、鋭くて、少し陰のある講談師神田松之丞になっていました。

舞台へ上がった松之丞さん。

 

 マクラ(本題への導入部)からきっちり笑いをとり、注目のネタは『谷風の情け相撲※1』。去年お越しいただいた際は『雷電の初土俵』でしたが、今年も相撲ものから始まります。『谷風-』は最強横綱と最弱力士のコントラスト、そして観客の視点が面白く、大いに盛り上がります。続いては、『西行鼓ヶ滝※2』日本一の歌人とうたわれた西行が、鼓ヶ滝で歌を詠むが宿を借りた老爺から意見されて・・・というお話。徐々におもしろくなっていく展開で、会場は笑い声に包まれました。

静まりかえる会場

 中入り(休憩)を挟んでいよいよ最後の大ネタとなります。高座に上がると、客席の照明を暗くしてほしいと頼んだ松之丞さん。そして、ゆっくりと人情噺『赤穂義士銘々伝・赤垣源蔵 徳利の別れ※3』が始まりました。講談は二の線の芸(二枚目、男前の芸)と言われるだけあり、先のネタとは打って変わって真剣な雰囲気。徐々に熱を帯びる松之丞さんにどんどん引き込まれていきます。迎えた、クライマックスではそのあまりの気合、迫力に満員のホールがシーンと静まり、観客全員が松之丞さんの一挙手一投足にくぎ付けになりました。会場の中でたった一人松之丞さんだけが動き、熱を放っていて、まるで、他の時間は止まってしまったかのようです。
 そして、松之丞さんがふっと気を抜き、演目の終わりを告げるとともに割れんばかりの大拍手。高座から下りた松之丞さんは一礼し、舞台から去って行きました。圧倒された私はしばらく動けませんでした。会場を出ると、そこにはなんと、物販にサインをする松之丞さんと長蛇の列。一人一人と言葉を交わし、どのネタが良かったかなど、和やかに話しています。私は、これがプロの講談師なんだと、改めて感動しました。
 お客さんが帰り、いよいよインタビューの時間。緊張しながらドアをノックすると、私服の松之丞さんが座っていました。高座前の、優しげな表情に戻っています。
 結果としては、当初の予定を上回り、飛行機の時間ギリギリまでインタビューにお付き合い下さいました。気になるインタビューの内容については、なんとなんとページ制限がきてしまいましたので、誠に申し訳ありませんが、『講談師 神田松之丞さんがやってきた~藤里の時が止まった日~後編』にて記載させていただきます。

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