藤里町のウェブサイトやパンフレットにちらほら登場する「聞き書き」という言葉。
目にして、これなんだろう?と思った方もいると思います。
この「聞き書き」とは、取材をし、文章を書き、まとめていく際の1つの手法。
取材を受けてくださる方を訪ね、その人の人生や知恵・技術について話を聞き、
話し手の話した言葉のまま、文章を作成し、編集・整理して読み物にしていきます。
実際の取材風景。じっくり話を聞けるよう、取材はなるべく少人数で行う。
藤里町では、2013年に町政50周年記念事業の一環として、町民30人の聞き書きを実施。
翌年には、それらをまとめた『想いここにあり~藤里の聞き書き集~』を発刊しました。
完成したストーリーを読み進めると見えてくるのは、町民1人1人の生き方と想い。
普段、顔を合わせる機会はあっても知らなかった1人1人のそれらを知ると、
“ここにはなにもない”、“どうせこんな田舎”とぼんやり平面に見えていた町が、
“あそこにはこんな想いでこんなことをしている人がいる”といった具合に、
立体的に鮮明に捉えられるようになっていきます。
何気なく目にしていた田畑や里山の風景が、通っていた食堂や床屋さんが、
何気なく近くにいた人の懸命な想いで支えられてきたことが分かり、
この1冊を通じて、多くの人が町への愛着を再確認していくことになりました。
中には既に亡くなった方もおり、想いや知見を知る貴重な資料に。
その後、この聞き書きは、町にあるものを発掘し共有する方法として、
地域おこし協力隊制作の月刊フリーペーパー『とじこじ』や
町民有志からなる編集部制作のローカルマガジン『とんじこんじ』、
観光情報を届けるウェブコラム「旅する藤里」など、
様々な媒体を通じて続けられています。
取り組み開始から10年が経った現在では、120本を超える作品が完成。
話し手となってくださった方やそのご家族が120組を超えただけでなく、
聞き手にチャレンジした人、取材交渉や写真撮影をした人、
記事編集や誌面掲載を行った人など、実に多くの町民が関わりながら、
町の“等身大の姿”を丁寧に描き続けてきています。
多くの町民が関わって完成した『とんじこんじ』は、これまでに第6号まで発刊。
多くの人に手に取って読んでもらえるよう、写真やデザインの力も借りて編集。
聞き書きは、書き手が何かを書き足したり、意見を付け加えたりせず、
話し手の言葉をそのまま使って編集していくというのが大前提。
そのため、話し手の生の声がストレートに表現されるという特徴があります。
藤里町への移住をお考えの方は、ぜひこの「聞き書き」に目を通してみてください。
インターネットで調べても見えてこない、素顔の藤里町がきっと見えてきますよ。
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さて、「ふじさとのいきかた」では、今後、この聞き書きの手法を活かして、
移住者のみなさんをご紹介するコラムシリーズを掲載していきます!
移住を決めたターニングポイントや藤里を選んだ理由は何だったのか、
移住後、藤里での暮らしをどう感じているのか、
期待どおりだったこと、大変なこと…などなど
移住者のみなさんの生の声をお届けしていきたいと思います。
どうぞお楽しみに!
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文=佐々木絵里子
佐々木絵里子(ささきえりこ)
わたす研究所・代表
埼玉県出身で、結婚を機に藤里町に移住。町役場および地域⼥性陣との協働プロジェクトを経て、2022年わたす研究所として独⽴し、地⽅における柔軟な働き⽅のしくみづくりに取り組む。2023年より一般財団法人 KILTA(キルタ)理事、藤里町教育委員会委員も兼務。小学生と保育園児の2児の母。