「自分達の羊の牧場を作りたい」という夢を叶えるため、2021年3月、家族4人で藤里町に移住してきた宮野さんご一家。移住と同時に新規就農し、「宮の羊の牧場」代表となった宮野友美さんに、藤里を選んだ理由や移住前後のお子さんのこと、移住後の藤里での暮らしなどについてお話を伺いました。
宮野友美さんと夫の洋平さん。(写真=船橋陽馬)
(前編)
小さい頃から動物好き
出身は新潟県柏崎市で、新潟県の海沿いのちょうど真ん中あたりです。ただ、家は 山寄りで、藤里町と似たような集落で田んぼが広がってて、結構雪も降るし、コンビニまで車で行かないといけないようなところだったので、藤里を見たときに全然違和感がなかったです。
小さい頃から動物が好きだったので、柏崎市の高校卒業後は新潟市の動物専門学校に行って、その後群馬県の観光牧場に就職。そこで旦那(洋平さん) と知り合いました。旦那が羊をずっとやっていたので興味が出てきて、そこから羊業界の方に。羊の生産牧場の研修にも行きました。
「宮の羊の牧場」には顔が黒いサフォーク種以外にも希少なテクセル種や交雑種もいる。
藤里を選んだ理由
旦那は結婚する前から羊の生産牧場をやりたいと考えていて、なら2人でやるかって話になりました。上の子が小学校に上がるタイミングで移住しようと、いろいろ準備をして、2021年3月に移住してきたっていうかたちですね。
群馬はすごく暑いんで、羊にとって気候がよくないんですよ。場所にこだわりがなかったので、他のところも探してみようよって話になって、旦那が中心になって探しました。
ここを選んだ理由は、藤里町が羊を飼っていたから。羊がいないところでゼロから飼うってすごく難しくて、そもそもまだ確立してない業界なんで、そうすると北海道とか文化があるところじゃないと入りにくくて、そこにちょうど藤里を見つけて。
羊のメインはやっぱり北海道に8割くらいいると思います。公共の施設だと何箇所か本州にもあるんですよね。福島と長野と、岐阜もかな。何件かあるんですけど、同じように町で羊を飼育してるところは。でも頭数は藤里が一番多いんじゃないかな。
藤里に決めて、移住する3年前から合間をみて何回か下見に来てて、「なんかいいんじゃない!」って。羊をやりたいって言ったときに、役場の方も引かなかったんですよ。本心はわからないけど(笑)。他の行政にお話ししたときは、「えっ?羊?なんか趣味ですか?」みたいになかなか話ができなくて。羊を知ってる人がいなかったのが壁だったんですけど、藤里町にはそれがなかった。羊やってるからイメージしやすかったのかも。
ゆったりと過ごしている羊は見ているだけで癒される。
少ないなりにちゃんと
子どものことについてはちょっと調べたりしました。小学校の人数は少ないのかな、とか。移住する前に来た時、実際に役場の方が幼稚園の中を案内してくれました。子ども2人を連れていって幼稚園の子たちと一緒に遊んだり、先生からお話を聞かせてもらって、給食まで一緒に食べさせてもらいました。小学校も大体のお話が聞けて。
なんか小さいけどすごくまとまりがある感じがして、学童保育もあるし、幼稚園と小学校も近いし、ちゃんと子どものことを見てくれるところなんだろうなって思いました。子どもの人数は少なくなってくると思うんですけど、少ないなりにちゃんと見てくれるような環境だなって。
小さいうちはいいけど、やっぱり大きくなった時に、高校は選べるのかとか社会人になったときはどうなのかなって思ったりしました。でも、藤里町は能代の方にも高校あるし、隣町には電車も通ってるし、なんかそこら辺も大丈夫かなって、不可能ではないかなって思ったりもして。
下の子は秋田訛りしてきて、漬物を「がっこ」って言ったり、飴をもらったら「あめっこもらった」って言ってます。すごくなじんでて、仲いい友達がいて「誰々ちゃん家に遊びに行きたい」って言われた時に、私の方がちょっと困ってしまう。その子のお母さんと会ったことなくて、どうしようやり取り……みたいな。私の方が毎回出遅れてます(笑)。
旦那と子どもとの時間は確実に増えたと思います。前職サービス業なんで、基本土日祝日いなかったんです。「パパ土日いないね。ママとどっか行こうか」っていうのが今までの群馬の生活だったんで、今は羊の世話はありますけど、日中は帰ってきたりするので遊べたり。
(後編に続く)
<参考情報>
この記事は「聞き書き」の手法を使って取材・執筆しています。「聞き書き」とは、取材をし、文章を書き、まとめていく際の1つの手法。取材を受けてくださる方を訪ね、その人の人生や知恵・技術について話を聞き、話し手の話した言葉のまま、文章を作成し、編集・整理して読み物にしていきます。詳しくはこちらをご覧ください。