FUJISATO LIVING COLUMN

  • 暮らしのツボ
  • 2024/10/30

藤里町には鉄道はなく、大半の町民はマイカーで移動しています。

車を持たない町民にとって、大切な移動手段なのが、路線バス。

 

特に毎月1のつく日に開催される「市日」に乗客が多いそう。(写真=船橋陽馬)

 

 

しかし、この路線バスも、今月10月1日から一部が短縮・廃止となりました。

過疎地域における公共交通の確保は全国的な課題ですが、例に漏れず、藤里町もこの課題に直面しています。

 

早速、この日の早朝から、廃止エリアの町民が運行しているバス停へ歩いて向かう姿や、町中心部で「回送」を掲げるバスの姿がありました。

人口減少の波が、1人1人の暮らしや何気なくそこにあった風景を、じわじわと変えていきます。

 

町の北西部・米田地区を走る「熊の岱」行きのバス。この風景も見られなくなった。(写真=船橋陽馬)

 

 

今後は、町中心部に位置する「藤琴大町(ふじことおおまち)」というバス停から、最寄り駅である二ツ井駅を経由し、能代市内の総合病院までを走る1路線のみの運行に。

平日のみで土日祝日は運休、片道5便ずつと、本数もだいぶ減ることになりました。(※1)

 

 

藤琴大町バス停。時刻表を見ると、本数が少ないのが分かる。

 

 

廃線となったエリアの交通手段を確保するために運行されているのが、「駒わりくん(こまわりくん)」という名前の「デマンド型(予約型)乗り合いタクシー」。

 

藤里の伝統芸能「駒踊り」をモチーフにしたキャラクターが目印。

 

 

この「デマンド型(予約型)乗り合いタクシー」、乗客がゼロでも運行する路線バスと違い、事前予約が入った時だけ運行され、予約人数によって車両の大きさを運行会社が調整するのが特徴。

運行状況や利用方法は自治体によって異なるため、注意が必要です。

 

藤里町の「駒わりくん」は、主に以下のような利用方法となっています↓

  • □1時間前までの事前予約が必要
  • □利用料金は1回100円
  • □町民だけでなく、誰でも利用可
  • □所定の場所(主にかつてバス停があった場所)での乗り降りが基本
  • □運行ダイヤは基本固定。各地区1日に片道5~6便運行
  • □地区により運行している曜日が異なる

 

この駒わりくん、実は、路線バスよりも運行本数が増えた区域もあるそう。

また、その名の通り、“こまわり(小回り)が利く”車両の特徴を活かして、バス停がなかった地区でも乗降出来たり、帰りの便(藤琴大町から出発する便)は、乗車状況によっては自宅に近くなどで降ろしてもらえることもあるとか。(※2)

路線バスの短縮・廃線と聞くと、イコール不便になったと思いがちですが、実は、駒わりくんによって利便性があがった部分もあるようです。

 

 

地区ごとの運行ルートおよびダイヤ。藤里町HPにも掲載されている→
https://www.town.fujisato.akita.jp/kotsu/c641/c645/2933

 

 

今回の公共交通手段の変更について、町役場担当者に話を聞いたところ、「駒わりくんを育ててほしい」という意外な言葉が出てきました。

 

というのも、駒わりくんの運行ダイヤ、路線バスが全面運休となる土日と町内にある内科医院開院日には必ず全地区で運行するなど、毎日の暮らしに極力制限がかからないように組んでいるそうですが、車両2台で運行している関係から、現時点ではどうしても平日運休の日が出来てしまっているそうです。

 

ただ、利用者が増えてくれば、この平日の“谷”を埋めることも、可能性としてゼロではないそう。

「高齢による運転免許の返納など、誰しも移動に困難を抱える時期が来る可能性があります。

そうなった時、お出かけをおっくうだと思わず、町民のみなさんで駒わりくんを“育てていく”と思ってどんどん利用してもらえれば。利用が増えれば、運行状況が変わっていく可能性はあります。

運行会社のほうで懇切丁寧な対応をしてくださっているので、ぜひお電話してほしい」

と語ってくれました。

 

車両の写真撮影に対応してくれた運転手さんも、とってもフレンドリーで親切でした!

 

 

駒わりくんの運行は、いわゆる「交通空白地域」を作らないという藤里町の意思表明。

明るい人口減少をかたちにしていくための、地域のチャレンジが今日も続きます。

 

 

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※1 このほか、藤里学園出校日はスクール線の運行あり。

※2 行きの便(藤琴大町に向かう便)は、路線バスへの接続時間を厳守するため、所定の位置で乗車する必要があります。

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文=佐々木絵里子

 

佐々木絵里子(ささきえりこ)

わたす研究所・代表

埼玉県出身で、結婚を機に藤里町に移住。町役場および地域⼥性陣との協働プロジェクトを経て、2022年わたす研究所として独⽴し、地⽅における柔軟な働き⽅のしくみづくりに取り組む。2023年より一般財団法人 KILTA(キルタ)理事、藤里町教育委員会委員も兼務。小学生と保育園児の2児の母。

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