FUJISATO LIVING COLUMN

  • 暮らしのツボ
  • 2025/12/30

町唯一の小中学校である藤里学園では、「藤里学びのスタンダード」という授業スタイルを実践しています。

今回は、筆者が保護者の立場から、授業参観で目にした授業の様子をご紹介します。

 

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「藤里学びのスタンダード」とは、従来の知識伝達型・暗記型の一方向的な授業ではなく、対話を通じて理解を深めていく双方向型の授業スタイル。

秋田県で20年以上前から実施されている「秋田の探究型学習」の深化版で、対話による意見交換で終わらせず、教員が様々な問いを投げかけ、さらなる検討を子どもたちに促すことで、新たな視点を得たり学びを深めたりすることを重要視しています。

 

「藤里学びのスタンダード」の流れ(藤里町教育委員会発行『教育ふじさと』より)※3

 

 

…と言われても、実際の授業の様子をイメージしにくい方も多いですよね。

それもそのはず、授業参観で目にしたのは、今の保護者世代の多くが受けてきた授業とは全く違うものでした!

 

 

 

知識伝達型とは異なる、実際の授業の様子

 

授業の冒頭では、黒板に「め」や「課」と書かれたマグネットが貼られ、その1時間のめあて・課題を設定します。

さすがにここは、事前に先生が考えてきて提示するのかと思いきや…違いました。

題材を投げかけた上で、子どもたちにどんなことを話したいか・考えたいか、それをやったらどんなことが分かりそうかなどといったことを発言してもらい、子どもたちが使った言葉・表現を出来るだけ用いてめあて・課題を設定します。

出だしから、子どもたちの主体的な学びを引き出す参加型の授業のスタートです。

 

授業で使用するマグネット。授業冒頭はめあての「め」もしくは課題の「課」を使う。

 

めあて・課題の設定後、1人で考え自分の考えをアウトプットする時間に入ります。

先生は、教室内を歩いて一人一人が書き出したものに目を通し、赤ペンで丸をつけたり、アドバイスしたりしながら、もう一歩考えを進められるような問いをさりげなく投げかけていきます。

筆が進まない子に対しては、個に応じた問いを投げかけ、返ってきた答えを「いいね、じゃあそれを書いてみたらいいよ!」と背中を押します。

 

その後はいよいよ、グループワーク・全体共有の時間です。

1人が発言すると、「いいと思います」「同じ意見です」などと言いながら挙手をやめる子もいれば、「似た意見です」「別の意見です」などと言って再度手を挙げる子もいます。

先生は、折に触れて「思っていることなんでもいいんだよ」「間違ってもいいんだよ」「みんなと違ってもいいんだよ」などと言って、安心して発言できる空気を作り、全員が発言できるよう配慮します。

 

藤里学園では、黒板と電子黒板を併用。黒板消しクリーナーも現役で活躍中。

 

 

そして、子どもの発言に注意深く耳を傾けながら板書をとり、ある程度の意見が出そろうと、子どもたちの考えを揺さぶるような問いを投げかけたり、別の視点を提示したりします。

「なぜ?」「それはどういうこと?」「今〇〇さんが出してくれた意見はどう思う?」「もしAではなくBだったらどうする?」などと子どもたちに問いかけるその姿は、遠い記憶の中にある正解を説く先生像とは一味違い、ファシリテーターやコーチングのように見えました。

子どもたちは皆、先生の問いかけに真剣に耳を傾け、時には「それってこういう意味ですか?」と確認をしながら、考えを確実に深めている様子でした。

 

 

 

「もう1スコップ深く『耕す』」ために

 

この「藤里学びのスタンダード」、義務教育学校開校準備期間の数年間で行なわれた授業研究の際、「9年間の学びの連続性をより活かすにはどうしたらいいか」という現場の先生方の問題意識から生まれた指導方法なんだそうです。

国や県から推奨されている授業スタイルを形式的にこなすことで満足せず、これからを生きる子どもたちにどんな力が必要かを追求したからこそ生み出されたものであり、子どもたちに向き合う覚悟を感じます。

先生方の姿勢が「探究型」だからこそ、実現できる授業スタイルと言えそうです。

 

学校教育目標「志を持って挑戦し、未来を切り開く児童生徒」の英語版。校内随所に掲示されている。

 

 

今回、一連の取材にご対応いただいた藤里町教育長・金野尚人さんは、「教員の問いかけがどれだけ子どもたちの思考を深く『耕す』ものに出来るかは、徹底した教材研究や経験にかかっています。ある程度で満足せず『もう1スコップ深く耕す』ためにどうしたらよいか、現場では日々、先生方が教科の枠を超えて研究や試行錯誤を重ねています。」と力強く語ってくださいました。

 

少ない人数の学級だからこそ、子どもたちのために、新たな制度を生かして、今出来る最大限の環境を作っている藤里学園。

聞けば聞くほど奥が深く、ごく一部しかご紹介出来ていませんが、移住をお考えの方にはぜひ一度、現場を見ていただきたいと思います。

 

学習面以外の様子も、またの機会にご紹介出来ればと思います。

長くなってしまいましたので、このへんで!

 

 

写真撮影や記事確認など、ご協力いただいた副校長・山木亮先生。ありがとうございました!

 

 

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※1 「藤里学びのスタンダード」については、藤里町教育委員会発行『教育ふじさと』などを参照。KyouikuFujisato.pdf

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文=佐々木絵里子

 

 

 

佐々木絵里子(ささきえりこ)

わたす研究所・代表

埼玉県出身で、結婚を機に藤里町に移住。町役場および地域⼥性陣との協働プロジェクトを経て、2022年わたす研究所として独⽴し、地⽅における柔軟な働き⽅のしくみづくりに取り組む。2023年より藤里町教育委員会委員も兼務。2児の母。

 

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