2023年は、白神山地が世界自然遺産に登録されて30周年。
そして今日12月11日は、まさに遺産登録日です!
ジブリの世界のような、太陽の光で輝くブナの森
今年は、テレビのニュースや特集番組で白神山地が紹介されることも多く、
それを見た友人から、「世界自然遺産のまちで暮らすってどんな感じ?」と質問を受けました。
私自身は、元々山好きでもなく、観光関連の仕事をしているわけでもないので、
白神や世界自然遺産と密接につながった毎日を送っているというわけではありません。
白神を象徴するブナの森は「奥山」にあるので、足を踏み入れるのは年に1~2度。
普段はオフィスでパソコンに向かい、スーパーで食材を調達し、といった暮らしぶりです。
ですが、そんな暮らしぶりの私でも、日々の中で「今、白神に触れているな」と感じることがあります。
遠くに広がる山並みや透き通った川の水を見たとき、
太く柔らかい山菜や大きなキノコを山の達人から頂いたとき、
ブナの森に多く暮らすというトンビやクマタカなどの
猛禽類(もうきんるい)が空高く飛んでいる姿を見たとき、等々。
考えてみると、山に足を踏み入れずとも、暮らしの中に白神はたくさんあります。
その中でも特に、白神に詳しい方々がご近所にごろごろいる、ということが、
知らず知らずのうちに、自分の見るもの、感じることに影響を与えてくれています。
白神山地のガイドさんや山の管理の仕事をする方々などに
スーパーでばったりお会いして、買ったものを袋に詰めながら
現在進行形の白神の情報をいただくこともしばしば。
「藤琴川沿いのガードレールに、この時期時々ヤマセミがとまってるんですよ」と教えてもらい、
その後、近くを通るたびに車のスピードを緩め、白黒のまだら模様を探すようになりました。
警戒心が強くなかなか出会えないヤマセミ(写真提供=白神山地世界遺産センター藤里館)
子どもたちも、身近な自然の中で知らず知らずのうちに白神に直接触れています。
幼稚園や学校で、専門家から話を聞いたり、森を一緒に歩いたりする機会もあり、
私より子どものほうが、白神を近くに感じているかもしれません。
遺産センター裏の庭で子どもたちが拾ったブナの実
30周年を記念して藤里の子どもたちや関係者のみなさんが書いた「未来へ託すことば」
手を伸ばせばすぐそこに、自然の深さを知る人たちがいて、
情報が耳に入って来たり、気軽に質問したり出来る、というのは、
世界遺産のふもとの町に住む醍醐味だな、と感じます。
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さて、移住者の聞き書きシリーズ「私のいきかた」では、
次回、町内にある「カマタ写真店」店主の鎌田孝人さんをご紹介予定です。
鎌田さんは、30代で藤里町にUターン後、白神山地の写真を撮り続けています。
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文=佐々木絵里子
佐々木絵里子(ささきえりこ)
わたす研究所・代表
埼玉県出身で、結婚を機に藤里町に移住。町役場および地域⼥性陣との協働プロジェクトを経て、2022年わたす研究所として独⽴し、地⽅における柔軟な働き⽅のしくみづくりに取り組む。2023年より一般財団法人 KILTA(キルタ)理事、藤里町教育委員会委員も兼務。小学生と保育園児の2児の母。