雑誌の営業として日本全国をまわり、数々の地方取材も行ってきたライター小野。縁あって足を運ぶことになった藤里町で出会うものごとを通して、藤里町の魅力や地方で暮らすことについて考えます。
はじめまして、藤里町
地域おこし、地方創生、移住促進…さまざまなキーワードとともに、地方の課題が語られています。日本全国の「地方」と呼ばれる地域は、ほぼ例外がないくらいに過疎化、高齢化を食い止めようと何らかの策を講じてがんばっているのではないでしょうか。
秋田県藤里町も、もちろん例にもれません。「ふじさとRe デザインプロジェクト(リンク)」(以下、Reデザインプロジェクト)を立ち上げ、地域の資源の見直しをはじめ、地域内外の人々が関わった移住促進計画が進んでいます。
私、ライターの小野民が、縁あってこのプロジェクトメンバーの末席に加わることになったのは2017年度のはじめのことです。
私は、「地域再生の敏腕コンサルタント」とか「都市計画のプロフェッショナル」などの華々しい実績があるわけではありません。でも、多くの地方を旅してきて、現在も地方に住むいち物書きとして、なぜか惹かれる藤里町に、関わらせていただくことになりました。
「小さい町」の魅力がきっとある
藤里町のお試し移住の案内文には、町のことがこんな風に紹介されています。
世界遺産白神山地麓に位置する町。人口約3500人。駅もコンビニもない町だが、町民全員が家族のように暮らしている。自然の豊かな大地から採れる野菜や山菜は天下一品。
手つかずのブナ林の美しさや、山菜の豊かさには追々触れるとして、人口3500人という規模感に私は惹かれている気がします。まだ藤里に訪れるようになって日は浅いですが、すでに100分の1以上の方には自己紹介をしたのだなぁと思うと、なんだか嬉しくなるのです。そして、「町民全員が家族のように暮らしている」というのも、あながち大げさな表現ではないかもしれないと考えるようになりました。
もちろん、その人間関係の濃密さが苦手な人もいるでしょう。私自身も宮城県の山あいで育ち、今は山梨県の12戸の小さな集落に住んでいますから、東京に住んでいた時代の気楽さが懐かしくなるときもあります。だけど、スマホひとつで何でもできてしまう時代だからこそ、多少のめんどくささも含めた関係性に身を委ねてみる、そこにきっと豊かさがあると思うのです。その想いを、藤里町に縁ができて、さらに強くしています。
けっこう便利な、藤里出張
藤里町への3度の出張を経て感じるのは、移動の気楽さです。「駅もコンビニもない町」なのは確かで、それも良さなのですが、意外と東京と近いという利点があるのです。羽田空港から大館能代空港行きの飛行機が1日2便飛んでいて、所要時間は1時間10分。そこからレンタカーで30分きっかりで藤里町の中心地に到着します。
コンビニは空港から町に来るまでの道すがら1軒のみですが、町中には夜9時まで開いているスーパー「ITOKU」があり、大概のものは買える充実の品揃えです。
スーパーや役場も近い町の中心地には「かもや堂(リンク)」と名づけられたスペースがあり、地元の人がくつろいでいたり、「お試し住宅(リンク)」のチェックイン場所になったりと要の場所。Wi-fiも飛んでます。もし藤里町を訪れたら、とりあえずかもや堂に行ってみれば、情報も集められそうです。
ちなみに、今回私が試験的に滞在させていただいているお試し住宅は、今年春にリノベーションされたばかりのすてきな家です。
藤里町に住んでみたい!とまでいかずとも、地方ってどんなところ?移住に興味があるんだけど何から手をつけていいか分からない、という方にもオススメ。3日から最大30日まで、快適な家に試住できます。しかも滞在3日で4000円、それ以降も1日2000円というお得な値段。2つ寝室があるので、2世代家族でお試し移住もいいかもしれません。
個人的には、メインで暮らす土地の他に、「旅行以上ふるさと未満」くらいの気持ちで過ごせる場所をいくつか持っていてもいいのでは?そんな暮らし方が増えるのでは?という予感があります。
一足飛びに移住をせずとも、毎シーズンに1度くらい訪れて、交流できる場所があるってどうだろう。藤里町に縁ができて湧いてきたこのアイデア。その可能性を含めて、藤里のことを探っていけたらいいなと思っています。
文=小野民
小野 民(おの たみ)
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に離島・地方・食・農業などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。