INTERVIEW 08

  • 牛もカラオケも、おもしぇよ。

    2018-03-16

    • INTERVIEW 08

    寺屋敷の青年と池田隼人


    私は昭和14年、寺屋敷の「たごえもんの家」で佐藤家の五人兄弟の三男坊として生まれました。中学校終わって、働きながら青年会やったりしていたんだけど、池田隼人が、長男は家にいて仕事せど、次男・三男は東京にいで仕事せど、と言うのニュースで聞いて、これは田舎で百姓するのはダメだと東京に行った。この町良くしたいって残ってたのに、ショックだったよ。東京では電気会社に勤めて、関東いろんなところに行った。だけども社長が亡くなって、新しい社長はおなご癖悪くて、ここにいては会社潰れると思って、2年いて帰ってきた。

    農協と、好きな電器の仕事

    当時は肥料など運ぶのに、馬車とか馬そりで各農家が農協まで取りに行ってた。二ツ井の三国商店では、もう配達してたから、農協でも車買えばいんでねがって専務さんに話したら、「佐藤君、本当に運転手に来るか?新車を買う予定があるから来いだゃぁ」って。それで昭和37年、23歳で農協に入った。トラックの運転手なって、運転免許証まだ誰も持ってない時、大型免許取った。

    それから購買に異動。「マヨネーズ、マッチ、マカロニ~」って売ったり、その後洗濯機、冷蔵庫、テレビの三種の神器。昭和40年代かな。「いやーあのづきおもしれがったな」って、当時の課長と今も話すよ。「なして俺の家に冷蔵庫持ってこねったが。俺の家お金ねって思ってるんだが」って問い合せあったり、「今日もう他で10台つけてて明日になります」って説明したり。メーカーも日立って人、ナショナルって人。町の電器屋さんもどっちを扱うかで分かれてた。村岡電機さん、浅利電器さんと競争だ。すごい時代だった。やっぱりテレビが忙しかったよ。アンテナも立てねばならねし。修理もできねばって東京で白黒テレビの講習受けて、今度はまたカラーだって。試験、また試験。真空管、テレビの型で全部暗記して。やればできるもんだ。電器好きだったから、好きな仕事だった。

    牛と一緒の40年

    結婚は25歳で、今年で51年目だ。牛を飼い始めたのは、やっぱり東京より給料安いし、子供養っていくには何とかしないとって思った30歳から。親戚の家畜商が、「正、ベコ安くてや~」って言ったから、雄牛2頭買ってきてって頼んだのが最初。2頭で7万円、11月だった。そしたら12月には別の家畜商来て、1頭7万円で売らねがって。これから大きくして楽しもうと思ってたから、春まで飼いたいって断った。それが、次の4月には1頭35万円、2頭で70万円で売れた。こーって(驚き)。牛ってこんなにいいもの、農家の人なしてやらねがって(笑)。

    元々動物好きだったし、牛は4個の胃袋あるから、エサやりは2回でいい。うっとあげれば1回でもいいよ。下にはもみ殻敷けば喜ぶ。俺とかーちゃんの車の音聞き分けて、俺帰ってくれば鳴くんだよ。セリに行けば、子供がた「お金、お金ちょーだい」ってはしゃいだもんだ(笑)。ボーナスより牛の収入の方が多かった。職場に特級酒差し入れしたこともあったよ。退職してからぶゎっと増やして、一番多い時で、親牛7頭か8頭、仔牛入れて全部で12、13頭かな。数年前病気になるまで飼ってたよ。

    病気、仲間の支え、カラオケ!

    俺は脳梗塞なって、喋れなくなった時あった。それを苦にして、今度は胃潰瘍になって暗くなったし、新聞もテレビも見たくなくなって、鬱だなって。前の町長、同級だから「町長は町民を助ける立場だべ」って言ったら「あだは心の病だ。あんまり苦にするな。別の医者行け」って。そうしてるうちに、自分でも乗り越えるがなって思ってカラオケさ行ったら、まーおもしれものな。藤里カラオケクラブ。明るい気持ちになれた。今では人も誘うけど、みんながら喜ぶよ。他には老人クラブの白神山地いちょうクラブ。たんぽ会や旅行、中通のことやいろんた話して、仲間で集まるのもいいよ。

    自分の好きなことやれて良かったな。藤里町は、昔は稲と畜産。町長も役場も一本なってやってきた。あと気になるのは、今結婚しないでいる人多いべ。昔は、30才前に3組結婚させねば一人前でねって言った。俺は7組まとめて、結婚式の司会は20組。これから、町会議員1人1年に1組。っていうのはどうかな(笑)。 結婚と言えば、東京オリンピックの年に結婚したから、2020年も元気でかーちゃんと見たいなぁ。(聞き手・布川)

    Interview / 佐藤正さん

    昭和14年、寺屋敷生まれ。
    JAに勤務の傍ら、最初は褐毛和種、後に黒毛和牛の肥育・繁殖を行い、表彰経験も多い。趣味はカラオケ。
※聞き書きとは、「一人の話し手」に「一人の聞き手」が質問し、答えたものを相手の話し言葉(一人称)で表す方法です。